お狐「いけません。何と仰っても証書が物を言います。この通り金三十三円三十三銭三厘三毛三絲三忽也、右正に借用と書いてあるじゃあありませんか。」
抜麿「困るナ貴様には、そんな大声を出されては外聞が悪い。証書証書とお言いだけれど、これは貴様証書では無い、新聞の号外では無いか。読んで聞かせようか、それ、旅順陥落、ステッセル降伏とあるでは無いか。」
お狐「そんな白々しいことを仰ってもいけません、現にここに書いてあります、金三十三円三十三銭三厘」
抜麿「そうは書いて無い、号外では無いか。」
お狐「イイエ金三十三円三十三銭三厘‥‥。」
抜麿「発狂したナやかましい、外聞が悪くて困るというに。」
お狐「でも、金三十三円三十三銭三厘‥‥。」
抜麿「ハハァ、掛けられて来たのだナ。」
お狐「金三十三円三十三銭三厘‥‥」
抜麿「エェもうやかましい、誰が知るものか。」
お狐「眼の中へ指を突っ込んでも金三十三円三十三銭三厘は引っ掻きだしますから、」
抜麿「おそろしい顔をして、指を出して掛かって来ては困るでは無いか。」
お狐「でも、金三十三円三十三銭三厘を下さらなけりゃあ。」
抜麿「あぁやかましい。そう掛かって来ては困る。アァ助けてくれー!眼の玉の助け船ー!」
お狐「さあ金三十三円三十三銭三厘をご返済下さいますかどうで、」
抜麿「返済するよ、返済するよ。あぁ情け無い。ステッセル降伏の号外一枚で三十三円三十三銭三厘取られる!術を掛けられて夢中になっておるものと争う訳には行かず、説いても諭しても解りっこは無し、忌々しい、奇之助のおかげで三十三円三十三銭取られる!」
抜麿「困るナ貴様には、そんな大声を出されては外聞が悪い。証書証書とお言いだけれど、これは貴様証書では無い、新聞の号外では無いか。読んで聞かせようか、それ、旅順陥落、ステッセル降伏とあるでは無いか。」
お狐「そんな白々しいことを仰ってもいけません、現にここに書いてあります、金三十三円三十三銭三厘」
抜麿「そうは書いて無い、号外では無いか。」
お狐「イイエ金三十三円三十三銭三厘‥‥。」
抜麿「発狂したナやかましい、外聞が悪くて困るというに。」
お狐「でも、金三十三円三十三銭三厘‥‥。」
抜麿「ハハァ、掛けられて来たのだナ。」
お狐「金三十三円三十三銭三厘‥‥」
抜麿「エェもうやかましい、誰が知るものか。」
お狐「眼の中へ指を突っ込んでも金三十三円三十三銭三厘は引っ掻きだしますから、」
抜麿「おそろしい顔をして、指を出して掛かって来ては困るでは無いか。」
お狐「でも、金三十三円三十三銭三厘を下さらなけりゃあ。」
抜麿「あぁやかましい。そう掛かって来ては困る。アァ助けてくれー!眼の玉の助け船ー!」
お狐「さあ金三十三円三十三銭三厘をご返済下さいますかどうで、」
抜麿「返済するよ、返済するよ。あぁ情け無い。ステッセル降伏の号外一枚で三十三円三十三銭三厘取られる!術を掛けられて夢中になっておるものと争う訳には行かず、説いても諭しても解りっこは無し、忌々しい、奇之助のおかげで三十三円三十三銭取られる!」